第107章

10月の湖水は、骨の髄まで冷たかった。

久世哲哉はためらいもなく身を投げる。水面を割った瞬間、喉元を締めつけられるような息苦しさが襲い、冷えきった水が鼻腔と耳の奥へ容赦なく流れ込んだ。全身を包む冷たさに、ふっと音が遠のく。

胸の奥が、ぎゅうっと潰れるように痛む。

それが身体の痛みなのか、心の痛みなのか――もう判別できない。

その刹那、哲哉の脳裏に、無数の映像が雪崩れ込んできた。

酒井初音が久世家へ戻ってきた日。

彼女は可憐なプリンセスドレスを身にまとい、雪のように白い肌は、きちんと愛されて育ったことを物語っていた。

澄んだ瞳が久世家の面々をまっすぐ見上げる。どこか戸惑いを含んだ...

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